豆腐の作り方

おいしい豆腐や揚げを作るためには、濃厚でもサラッとした豆乳が必要です。豆腐屋にとって豆乳をつくることは、最も大事な仕事といえます。

1.前日昼ごろから翌日使う大豆を水に浸けます。

水に浸けた大豆
水に浸けた大豆

まず、豆についた汚れをしっかり水洗いして落とします。
豆の種類や状態によって浸ける水温を調節します(例えば、「10月頃の音更大袖振大豆ならば、水温21℃で13時間ほど浸ける」というように)。
よい大豆は洗っても皮がむけずに水に浮くこともありません。身がしっかり詰まっているからです。
大豆は呼吸をしているので、浸けているうちに細かな泡が浮かんできます。
白い泡でいっぱいになると浸けすぎです。二つに割って真ん中にスジが見えるくらいが最適です。芯があるようではまだつかえません。
大豆の浸かりが十分な頃合いを見計らって水を抜き、今度は冷たい水に浸しておきます。大豆の酸化を抑えるためです。

2.大豆を磨り潰し、呉(ご)を作ります。

豆を入れるところ
豆を入れるところ
豆を搾り呉が出るところ
豆を搾り呉が出るところ

当店ではそれぞれの大豆の特徴を生かし、大豆の種類をブレンドして使っています (大豆の紹介参照)。例えば、おぼろ豆腐では、音更大袖振と宮城白目を使います。
ブレンドするのは、作る豆腐の特徴を、大豆の種類とブレンドの割合によって引き出しているからです。当店では大豆が持つ糖分とタンパク質の比率に着目しています。甘みがしっかりした豆腐を作るには、大豆の糖分が重要です。また、豆腐の固まり方は大豆のタンパク質の分量で大きく変わります。ところが、糖分が多い大豆にはタンパク質が少なく、タンパク質が多い大豆には糖分が少ない傾向にあります。そこで、双方のいいところを掛け合わせるために、大豆の種類をブレンドして使うのです。
また、「水が美味しいから豆腐も美味しい」といわれる京都ですが、四条木屋町にある当店の地下水は鉄分が多いため、豆腐作りには適しません。当店では地下水ではなく水道水を使っています。浄水器を使って余分な塩素を取り除き、さらに軟水器を通しています。硬水は豆腐作りに向きません。
その水を4℃ほどに冷やし、少しずつ加えながらグラインダーで豆を摺(す)ります。水を冷やすのは高速で回転するグラインダーの熱で大豆が焦げ付くのを防ぐためです。こうして水と砕かれた大豆が混ざったものができます。これを呉(ご)と呼びます。

3.呉を炊き、豆乳を加熱します。

釜の中で呉が動いているところ
釜の中で呉が動いているところ
豆乳とおからが出てくるところ
豆乳とおからが出てくるところ

呉を釜の中に入れ、99℃~100℃まで炊きます。熱はボイラーで作った水蒸気を利用しています。
熱を加えるごとに呉の動きが変わります。徐々に動き出し大きく動き出したら、いったん圧力を下げます(約92℃)。
圧力を下げて静かになった呉が、さらに温められことにより再び動き出したら(約98℃)、さらに圧力を下げます。
そして、また温度の上昇で大きく動き出したら(100℃)、すばやく加熱を止めて絞りだします。
呉の様子を見ながら圧力を上げたり下げたりし、温度調節を繰り返して炊きムラのないように炊きあげるのはとても難しい作業です。
また、当店では天然由来の成分の消泡剤を使用しています。魚の骨や貝殻などと同じ炭酸カルシウムを成分としています。現在使用している釜では、これなしでは炊きムラができてドロドロになり、良い豆乳がうまく作れません。ただし、その使用量は最低限になるよう心がけています。

4.釜の下についている搾り器で豆乳とおからに分けます。

豆乳濃度をみる
豆乳濃度をみているところ

豆乳も香ばしい大豆の香りがし、表面にも透明なきれいな泡が立ち、上手に炊けています。サラッとした出来上がりです。
出来上がった豆乳の濃度をみます。Brix(ブリックス)13.5度あります。Brixとは、果物などの糖度を表す値です。豆腐作りでは豆乳濃度を表す基準として使われます。ただし、甘味成分を検出しているわけではなく、大豆の固形成分が豆乳中にどれくらいあるかを計測していることになります。Brix値が低い豆乳は液体成分が多いのでシャバシャバしています。かといって、Brix値が高すぎるとドロドロもったりしてしまいます。当店では、Brix13.5度をできのいい豆乳の目安にしています。

一釜一釜データを取ります。豆乳濃度やでき加減によって、豆腐を作るときに豆乳と合わせるにがりの量や温度を調節します。